彼岸の電影、彼の夜の/9.11
店に入ると、奥に向かって伸びるカウンター。カウンターの先、広くはない店の奥に店長がいる。一人。横顔。
ドアチャイムの音に、こちらを振り返った。カウンターの上、天井近くの棚に置かれてるテレビの画面を観ていたようだ。
店長は私を見て、いつもの笑顔になったけど、そこにはなにか張り詰めたものがあって。
店長は言ったのだ。「世界が大変なことになってるよ…」
何言ってんだ。いつもの軽口…
店長が視線を戻したテレビの画面の中で、確かに、世界は大変なことになっていた。
何だこれは?
ニュースだって?映画じゃなくて?
繰り返し流される、映画みたいな、嘘みたいな、本当だとしたら悪夢でしかない、映像。
現実離れし過ぎている。この場で真偽などわからないが…これが現実なら、確かだと信じていた昨日までの現実は何だ?私は何を信じていた?
詳しい話はそれからだったが、店長と二人、無言でテレビを見上げていた、少しの時間が永遠のようだった、あの日。
やっぱり相手が大きすぎて、自分はいまだに小さすぎて、なんだかうまく言えないのだけど。21年前。あの夜を今も忘れられない。黙祷。