並行世界のごめんなさい。
正直なところ。
口に出すまで「はにゅうくん」なのか「はぶくん」なのかわからないのだ。
いやもちろんわかるんだよちゃんと考えれば。わかるんだけど。こんなの総ツッコミ案件なんだけど。
適当に世間話なんかしてて口火を切る瞬間、頭には「羽生」と漢字が点滅し、それが「はにゅう」なのか「はぶ」なのか完全に2択。文脈もシチュエーションも関係なく完全に2択。自分でもわかってる、どっちかが正解でどっちかは間違いなのはわかってる。でもその瞬間は絶対に判断できず、話の勢いのまま完全に1/2で発言するのだ。
そして口に出した瞬間には自分で気付いている。いや今スケートの話だったろはにゅうくんだよ。
別に人を間違えてるわけではない。何か「羽生なる名」が私の中で不確定。私が口に出すその瞬間までそれはどちらでもなくどちらでもあり、口に出した瞬間にはにゅうなのかはぶなのか確定しそして間違えた私と間違えなかった私が分岐する。シュレーディンガーの羽生である。
はにゅうくんをはにゅうくんと言えた私、はにゅうくんをはぶくんと言った私、はぶさんをはぶさんと言えた私、はぶさんをはにゅうさんと言った私。過去のその瞬間は全て等しく私の中にあり、未来の全ての可能性もまた、等しく私の中にある。
話を大きい風にしてごまかそうとしてるが、普通に失礼にあたるのでちゃんと考えて喋ろうとは思ってる。
ただ、その一瞬、私だけが「氷上で華麗にクアドラプルアクセルを舞う羽生善治竜王」を見ているので、それはそれで贅沢かなとも思う。
イイ感じでメガネがすっ飛んでいくのだ。