来たりて行きて、また来たる。

じゃちょっと、なまはげの話でもしますか。

なんて言ってみたいものだ。

たぶん専門家に届かないレベルでは、こんなになまはげを語りたい人はいないだろう。

持ち上げすぎた。単純になまはげ好きである。故に「なまはげ伝道師」の資格を取るまでは得意げに多くを語るわけにはいかない…謙虚にそう思うくらいにはなまはげ好きなのだ。

うっすい縁ならなくもないが秋田には行ったこともなく、生なまはげを見たことはない。なまなまはげって言いたいだけだ。いつかほんとに見たら「生なまはげだー!」って叫ぶだろう。

でも私に生なまはげを見る必然はあるのだろうか?あれはムラの祭りなのだ。しかも年越しに、地元の人の家でやるのだ。本義でいえば余所者が入る余地はない。ああ経験してみたい。みたかった。

年末になるとわけのわからない超恐ろしい何かが家にやって来て暴れ狂うのだ。私を悪い子として連れて行こうとするその存在から家族はあれやこれや手を尽くして必死に私を守り、恐ろしくも気高き神に今年を感謝し来年を誓う。ああ、ああ。なんて美しい行事なんだ。そんなトラウマ級の幼少期があってもよかった。

たぶん私の地元にも形式で言えば似たような行事はあるはずなのだが。なんだろうこのなまはげに集約される思い。

あ、最初の方で言ったが「なまはげ伝道師」という資格は実在する。知らない人には冗談みたいな話かも知れないが、ある。昔知り合いが取りに行ってた。その時は聞いた私もホントかよと思ったものだが。その人は言ったのだ。

私はなまはげにはなれない。血がないものはなまはげにはなれないんだ。だから私は、なまはげ伝道師になるしかないんだ。

よくわからないが無駄にカッコよかったな。

だから私も、人生の1つの点としてなまはげ伝道師を目指す者ではある。

しかし、実際これもさっき言ったが、なまはげは地元の行事だ。出身者でない私の気持ちだの、ブームだの世界遺産だのほんとはどうでもよくて、去年もどこかで、私の知らない男鹿のどこかで地元の子供がただ恐れ泣きわめいてくれていたなら、それでいい。日本の地方の祭りなんてそういうものだ。

神は訪れ、子供は泣き、大人は気持ちを改める。ただただ今年も来年も続いていけばいい。せめて私が死ぬまでは、あいも変わらず、この世界のどこかで。

旅/trip

Posted by naduki