我が顔にへばりつけ空飛ぶ怪異

好きな妖怪を訊かれたら、一反木綿と答える。

彼とは何かと縁があってね。ふふ。

って言いたいのだが、誰も好きな妖怪を訊いてくれない。

それにしてもだ。

水木しげる先生がなぜ一反木綿を選んだのか。調べる程にわからない。

今となっては鬼太郎チームの一員としてなくてはならない、唯一無二のバランスに思えてしまうのだが、それって水木先生(とアニメつくった人たち)が作り込んだ設定なのだ。元々の一反木綿はなんやようわからん布の怪異であって、目も手もないししゃべりもしない。

「空飛ぶやつとか布のやつとか他にもいくらでもいたのでは?」という思いが拭えない。故に逆に、ここまで知名度とキャラクターを盛り上げたセンスに感服する。なんなんだ。

鬼太郎がなかったら私もわざわざ一反木綿好きなんて言わないだろうな。縁は奇なもの。

鬼太郎の一反木綿も好きだが包括的に一反木綿が好きなのだと言い張りたいので、現状の後付け設定に頼らず本来の一反木綿が登場人物になる物語を考えてみる。無理だ。どんだけ考えてもなんやようわからん布の怪異だ。京極夏彦さんなんとかしてください。

秋にそんなこと考えながら公園散歩してて「エピソード足りないし情緒出ないんだよなー一反木綿」って呟いたとたん、肩にまあまあの衝撃で銀杏が落ちてきた。振り仰いでも上空には何も見えなかったが、気を悪くさせたのなら、ごめんね。