失われたクリスマスを探す物語

もう年末待ち切れないから、クリスマスの話をしよう。

大体クリスマスは少しモヤモヤしている。

家族でどうとか恋人がどうとか、元々はそういうんじゃないとかKFCがどうしたとかはどうでもよくはないがまあ、どうでもいい。

キラーパスは「いくつまでサンタクロースを信じてた?」である。

私の場合、思い出せる最初のクリスマスはこうだ。

ある朝目を覚ます。

枕元に見知らぬ包み、その中におもちゃとメッセージカード。私は思う。

(…何事だ?)

異常事態発生である。何者かがこの聖域に踏み込んだのだ。私はおもちゃを手に母の元へ走る。信頼する母ならこの不可解な現象を説明してくれると信じ。

しかし母はおもちゃを手に物言いたげな私を見て、こう言い放った。

「あら、サンタさんが来てくれたのね、よかったね!」

私は思った。

(サンタさん…って…誰だ…?)

以上である。そしてそれ以前も以後も、サンタクロースについて誰かと詳しく話した記憶がない。

うまく言えないのだが「サンタクロースはいるのか、誰なのか」以前に「クリスマスとサンタクロースはこういうものだ」という基本設定が説明されないままにストーリーが始まってしまったのだ。毎年朝目覚めると枕元にプレゼントがあって、スタンド攻撃でも受けてんのかって違和感である。

私は上に2人きょうだいがいて、小賢しい3人組はたぶん早い段階で「この現象がどういう絡繰か」に関しては結論を出していたと思う。しかし前述の通り私は「そもそもこのイベントのチュートリアルを受けずに参加している」のである。デスゲームなら真っ先に死ぬ。

推測だが両親は上の2人には順次説明していて、3人目もわかってるつもりになってたのではないだろうか。もしくは上の2人や友達から知識を得ていると思っていたか。

どっこい末っ子は意外とコミュ障であった。チャンスは無数にあったのに知らされず、知ろうともせず、ぼんより日々を過ごしていたのだ!

これが最初の質問に対する回答である。「ぼんやり生きてきました」であり「両親から愛されてなかったかもしれない」であり「世の中に興味なさすぎだろ」である。実際そこまで大したことじゃない、が故に少しだけ、少しだけモヤモヤするのだ。つまり逆ギレ気味に問いたい。「なぜサンタクロースを信じてる時期があったことを前提に訊く?」

そして実はこれってそんなに少数派じゃないんじゃないかとも思っている。みんなでそんな話をするときは注意深く観察するといい、きっと1人くらいは、中途半端に楽しそうな顔しながらちょっとモヤついてるやつがいる。

一体いつから「サンタクロースを信じていた」と錯覚していた?

優しくしてやってくれ。