炎のつるぎ持て楽園を守る天使
ふいに「全自動芝刈り機」のことを思い出す。前にどこかの施設の構内で見た。厳密にそう呼んでいいのかとか正式名称とかは知らないけど。
言うなれば屋外型の芝生専用ルンバ。小さめスーツケースくらいの、子供が乗るクルマの玩具くらいのボディで、定められた範囲を動き回って芝を刈り、設置されてる充電ポイントに適宜戻って充電する。溜まった芝を捨てたりはするのかな、そこはわからないが。
そういうものだと理解した瞬間、頭の中はディストピアである。
人類がすべて滅び、だが自動化された電力供給は生きていて彼は芝生を一定の長さに刈り続け刈り続け、荒野と化した東京でただこの場所だけが、永遠に青々と美しい芝生の庭なのだ。芝生エデンである。
わかってる、そうはならねえだろってわかってる。私がディストピア求めがち過ぎなことわかってる。でも。
長い長い旅をしてきた新人類がついに辿り着くかつて日本と呼ばれた地の最大の謎、芝生エデン。
あらゆるものが熱平衡の死に向かう宇宙で唯一それに抗うものとなった水の惑星地球の芝生エデンという奇跡。
そこで今も彼が、全自動芝刈り機が、主もいないままにイイ仕事をしている。そんな風景が見たいのだ。