…, may gets.
虎となった私達は。夜道をそぞろ歩き口々に、やれ月が綺麗だと吠えたてる。
月の名に思い至ることもなく。ただ無情に明るい夜道に慄き、澱んだ眼で夜空を見上げ、半開きの口のいぎたなく。
月が綺麗だと吠えたてる。
欺瞞なき満月も、月をいただく天空も、降る月光に為す術なく佇む街並みも。みな清冽に美しく。
月明かりを辿る虎どもは。今宵の幸運に感謝する素振りもなく。
月明かりを額に受け。背に受け。真昼のような夜の街を、そぞろ歩いて鉄火場へ。
明日の月日も無きものと、未だ夜明けを知らぬ眼で。