コイハニビイロ。/駒場公園

駒場公園に行った。

知らない人用に言っておくと、駒場公園は目黒区駒場にある公園だ。駒場にある公園には「駒場公園」と「駒場野公園」がある。どちらもそこまで大きくないが良い公園で、どちらも緑は深く春は桜がキレイだったりするので、ときどきうろついている。駒場野公園はワイルドな感じでよいのだが、駒場公園は箱庭感があってシブい。そんな駒場公園である。

久しぶりに行ってみたら、ちょっとだけ変わっていた。

奥の芝生広場がとても良いのだが、その広場に立つと、目の前に館が見える。「旧前田侯爵邸」昭和初期の洋館だ。シブい。

洋館は内部公開されているのだがその入口は広場側ではないため、広場側に面したなんというかテラス的な部分には広場側から入れないようになっている。三角コーンとポールバーが置かれていて。

その三角コーンとバーが、ちょっとだけ変わっていた。

カラーリングが違うのだ。この前までずっと、よくある「赤コーンに黒・黄色のトラ柄バー」だったのが、色が変わってる。ビビッドな赤ではなく小豆みたいな暗めの赤。黒はまあ黒だが、黄色はくすんだ真鍮みたいな暗めの金に変わっている。

シブい。シブすぎる。

前から気になっていたのだ。樹々に囲まれた芝生広場から望む洋館の風景は美しくまさに箱庭という風情なのだが、そこに工事現場みたいなコーンとポールが置いてあるのがちょっとなあ、って思ってた。でも子供が勝手に入ったり花見客が汚したりしちゃいけないから、コーンとポールは必要だし仕方ないのだと。

それが変わった。わざわざ変えた誰かがいる。

カラーリング変わったコーンとポールは、間違い探しみたいに洋館の雰囲気に溶け込んで、でも屁理屈みたいにちゃんと「赤・黒・黄色」なのだ。成立している。全部成立してる。

これがつまり、愛なのか。風景を愛し歴史を愛し、同時に訪れる人を愛する人達のささやかな努力によって、世界はこんなにも形を変えるのか。

感服。同時に自分が文句たれるばかりで何もしてこなかった人間だと見透かされた気持ちになって、私は芝生に立ち尽くす。初夏の風と緑の匂い。ささやかで重要な変化を重ねて、季節は巡る。