ナツハカエリヌ。/代々木公園

代々木公園に行ったら、芝生があった。

そこにはただ広い芝生があったのだ。

コロナ禍に入ってから、しばらく公園自体が閉鎖され、完全閉鎖が解除されてからも主要通路以外はネットが張られていて、緑地的な部分はほとんど入れなかった。花見とかアレコレで密になるのを避けるためとかだ。

2年と少し。短いようで長い。

ネットの囲みはときどき少しずつ範囲を変えていた。少しずつ、緑と土が。いつかこのネットがなくなる日が、東京が日常を取り戻す日だった。

そもそも「東京」も「日常」も、何であるかを知るように語る資格、私にはないけど。それでも。

ざっと7割というところか、ネットは大幅に撤去されていて、遮るもののない広い芝生が見えたとき、私は心の中でガッツポーズしていた。

いや実際に人目はばからずちゃんと物理的にガッツポーズしてたな。「いよっしゃああ」て言ってた。

これは人類の勝利なんだよ。そんな偉そうに言えないこといろいろあったけどさ。まだまだいろいろあるわけだけどさ。

中央の広場の芝生ゾーンはイイ感じに芝生がワイルドになっていて、ネットがあったとこの境目だけ伸びてたり色味が違ったりして、楽しい。無駄に写真とか撮る。

芝生を再生するという目的もあったらしい。さすがだ。

緑の匂いがする。

こないだまでネット越しに見ていたあのもっさもさの草叢を、彼岸であった草原を、すでに懐かしく思い出す。

勝ったのはわしらじゃない。

本当の勝利はまだ遠い。

それでも今日くらいは、ささやかに祝いたいのだ。

それを愛し守ろうとする人々に、労いと感謝。

旅/trip

Posted by naduki