何もいらない。/ヨルシカ『月光』

ヨルシカLIVE『月光 再演』ツアーファイナル、3/31東京ガーデンシアター。

まさしく、これはアンフェアだ。

昨日の今日では。ヨルシカの何を観ても聴いても涙しか出ない。

この声が、歌が、永遠に失われるのかもしれないと、あの時思った。

再び出会うことができた。しかし想像できないことだったのだ。今聴こえる1つの言葉、1つの音、1つの呼吸のその次の瞬間には、それが永遠に失われる可能性が常にあるのだと。

この一瞬一瞬が途方も無い価値のあるもの。その連続で私は生きている。当たり前のこと。人はそれぞれの生き方の中で時々、その当たり前のことに改めて気付くのだろう。私は今日、少し新しくなった。

そんなことなくても圧倒的に素敵なライブだったのだが。ミュージシャンとしてのヨルシカが私にとって無二であることは揺るぎない。今回はそれに加えて、私にとっての「はじまり」のヨルシカが再演としてここにあり、そして私の意志とは無関係にやってくるのだろう「終わり」までを垣間見た。

『人生の価値は終わり方』。終わらせることのできない私にも終わり方を想うことはできる。それはもしかしたら、続け方を知る唯一の方法なのかもしれない。

とにかくいいライブだった。音も歌も照明も空気も美しかった。suisさんの立ち姿。照らす月明かり。初演のあの日に見た景色が、より深く深く心を浸す。冷たくて暖かい、あの水の底で。