経年烈火。/ほしのこえ
トリウッドのアニメ映画祭りの残滓から、新海誠さん祭りに流れ着く。
「雲の向こう、約束の場所」「秒速5センチメートル」「彼女と彼女の猫」「ほしのこえ」。
見すぎた。ぐらぐらする。
そんなことしてたって友人に言ったら「見たことないんだけど『秒速5センチメートル』って鬱アニメなんでしょ?」みたいなこと言われたが、あれは鬱アニメなんて生易しいものではない。
いや鬱というものも生易しくなんかないけど。たぶんベクトルが違う。
私が怖いのは「時間が経つ」ことだ。新海誠さんの作品ではこれがちょくちょくある。
「大団円から3年後…」とか「戦乱に明け暮れたこの5年…」とか、じゃない。
さあどうなるんだこのあと、みたいな展開の後で、葛藤を抱えた主人公が何も出来ず無為にしかし葛藤を抱えたまま、いきなり「…そのまま、2年が過ぎた。」みたいなことを言い始める。なんならその間に葛藤が薄まってたりする。
これに遭遇するたびに、息ができなくなる。怖い。「そのときは自分の世界を揺るがす大問題だったもの」が、全く解決できず触れることもなく、時間だけが過ぎてしまった。その間に日常のドラマだって山ほどあったはずなのに。
経験があるのだ。私の人生などちっぽけなものだが、ちっぽけな人生にはちっぽけな最大の悩みがあり、動けなかった、動かなかった自分がいる。ドラマの大小に関わらず、記憶の中のその重さは実感を伴って私の首を締める。逆にあんなちっぽけな悩みで抱えたまま何もしなかった私の人生マジちっぽけ、みたいな追い打ちまである。
ちっぽけちっぽけ言い過ぎたな。人の悩みに大きいも小さいもない。わかってる。
言わずもがなだが、結局はそんな息苦しさがクセになってしまい、今回も劇場に足を運んでしまっているわけだ。私が忘れる私をできるだけ忘れずにいるためだ。「彼女と彼女の猫」以外はぜんぶ見たことある作品なのだが、忘れたころにやってくる「○年経過」にやはり魂を抜かれる。そしてやはり世界は美しい。怖い。怖いな新海さん。
そして猫がかわいい。ずるい。